【遺言相続】公正証書遺言の作成までの流れを弁護士が分かりやすく解説
弁護士が徹底解説!紛争を避ける公正証書遺言の作成手順とメリット
皆様こんにちは。弁護士の浜田将裕です。 今日は、遺言、特に最も安全性が高いとされる公正証書遺言の作成の流れについて、詳しく解説していきます。
遺言とは、ご自身が亡くなった時に所有されている財産(遺産)を、「誰に何を渡すか」を明確に定めておくための書類です。この遺言を作成しておくことには、主に3つの大きな必要性があります。
まず一つは、「相続の紛争を防止する」ことです。遺言がない場合、相続人の皆様が集まり、どの遺産を誰がもらうかを話し合う「遺産分割協議」が必要になります。この協議の過程で、希望がぶつかり合い、しばしば紛争へと発展してしまうのです。紛争が発生すると、当事者間の交渉で合意に至るのが難しい場合、裁判所での調停や、最終的には裁判所が決定を下す審判となり、解決までに長い時間と労力がかかります。遺言を書いておけば、ある程度その辺の紛争を事前に防ぐことができます。
次に、「相続事務を円滑に進める」というメリットです。例えば、不動産の登記手続きや、銀行の預金口座の解約手続きなどを行う際、遺言書があれば、窓口での事務作業や必要書類が大幅に減り、手続きがスムーズになります。
そして三つ目は、「ご自身の意思を反映させる」ことです。ご自身の遺産を渡したくない相手に渡さないようにしたり、反対に、法定相続人ではないけれどもお世話になった方へ財産を遺贈(いぞう)したりすることが可能になります。
遺言を作成すべき具体的なケース
特に遺言を作成しておくべきケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
- お子さんがいらっしゃらないご夫婦の場合: 配偶者とご兄弟(または甥・姪)が相続人になる場合、遺言がなければ配偶者に全財産はいかず、ご兄弟にも相続分(例:1/4)が発生してしまいます。このケースでは、遺言を書いておかないと、奥様(またはご主人様)とご兄弟との間で遺産分割協議をしなければならなくなり、もし人間関係が希薄であれば、紛争に発展してしまうリスクが高くなります。全財産を配偶者に承継させたい場合は、遺言が不可欠です。
- 再婚し、前妻(夫)との間にお子さんがいらっしゃる場合: 現配偶者と前配偶者のお子さんとの間で、人間関係が複雑な場合や希薄な場合、自分の財産を誰にどのように渡すのかを事前に決めておくべきです。
- 相続人ではない人に財産を渡したい場合: 例えば、長男の奥様のように、法定相続人ではない方へ財産を渡したい場合、遺言の中で「遺贈」をしておくことによって、遺産を分けることが可能になります。
- 事業をされている場合: 個人事業の事業用資産や、法人経営における株式などが相続によって分散してしまうと、経営がうまくいかなくなる恐れがあります。後継者を明確に定め、その方に集中的に財産を承継させるよう遺言に記載しておくべきです。
- 特定の不動産を特定の相続人に承継させたい場合: 長男が住む建物は長男に、次男が住む建物は次男に、というように、個々の財産の分け方をあらかじめ決めておけば、遺産分割の手間が省け、相続がスムーズに進みます。
- 相続人が誰もいない場合: ご自身が築き上げた財産を、最後にどうするか(例えばどこかに寄付をしたり、お世話になった人に遺贈したり)を決めておく必要があります。
遺言作成のベストタイミングと公正証書遺言の優位性
遺言は、一度作成しても、後でいつでも内容の変更や撤回が可能です。若いうちからでも作成しておくことはできますので、「もう動かせない」と考える必要はありません。
最も重要なのは「意思能力」があるうちに作成することです。意思能力とは、遺言の内容(誰に何を相続させるか、遺贈するか)を自分で認識し、理解する力のことです。もし病気や認知症が進み、この意思能力がない状態で作成された遺言は無効となってしまいます。ご自身が元気で、会話もスムーズにできるうちに、準備を進めておく必要があります。
遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、私は「公正証書遺言」を強くお勧めしています。自筆証書遺言は要件が厳格に決まっており、一つでも要件を欠くと無効になるリスクがあります。公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成に関与するため、形式の不備による無効のリスクがほとんどなくなります。また、公証人が遺言者と面談して意思能力を確かめますので、後になって意思能力の有無を巡る紛争のリスクも大幅に防止できるというメリットがあります。
公正証書遺言作成の具体的な流れ
公正証書遺言の作成は、ご自身で公証役場とやり取りを進めることも可能ですが、弁護士にご依頼いただくことで、プロセスの全てをサポートできます。弁護士に依頼した場合を念頭に、具体的な流れをご説明します。
1. 事前準備と原案作成 まず、ご自身の戸籍謄本、住民票、相続人との関係が分かる戸籍謄本を準備します。次に、所有している不動産、預貯金、株式などの遺産リストを作成し、その内容が分かる資料を準備します。 弁護士が遺言者様のご希望をお伺いし、「誰に何をどれだけ渡すか」を明確にした遺言の原案を作成します。
2. 公証人との事前協議 弁護士が作成した原案と、ご準備いただいた資料を公証役場へ提出します。担当の公証人がその内容をチェックし、不明点があれば公証役場と弁護士の間で打ち合わせを行います。この事前協議は弁護士が担当しますので、この段階でご本人が公証役場に行っていただく必要はありません。公証人により正式な案が作成され、弁護士を通じて遺言者様へ最終確認が行われます。
3. 作成日当日 作成日をあらかじめ予約しておきます。当日、公証役場(または出張先)にて、証人2名の立ち会いのもと、手続きを行います。 公証人による本人確認と、遺言の内容案の確認が行われた後、公証人が内容を一つ一つ読み上げていきます。遺言者様が内容を確認し、問題なければ、公証証書遺言の原本に署名と押印を行います。続いて証人2名が署名押印し、最後に公証人が署名押印することで完成します。
当日の所要時間は、内容にもよりますが、通常15分から30分程度で完了することが多いです。
作成された遺言の原本は公証役場で保管されます。遺言者様には、その正本と謄本(写し)が交付されますので、ご自身で保管していただくか、弁護士などに預けていただくことも可能です。
4. 費用について 公正証書遺言の作成費用は、「弁護士費用」と「公証役場の手数料」の二つが主にかかります。弁護士費用は法律事務所によって料金が異なりますので、必ず事前に見積もりを取得してください。公証役場の手数料は、遺産総額に応じて決まり、通常数万円程度の幅で収まるパターンが多いです。証人を弁護士に手配してもらう場合は、別途日当等の費用が発生する場合もありますので、併せて確認が必要です。
なお、病気などで公証役場に出向くことが難しい場合は、公証人が病院やご自宅まで出張して遺言を作成してくれる制度もあります。この場合は出張料や割増手数料が発生しますが、役場に行けなくても作成できることを覚えておいてください。
公正証書遺言は、ご自身の最後の意思を確実に実現し、残されたご家族の平穏を守るための重要な手段です。元気で意思能力のあるうちに、ぜひ専門家にご相談いただき、準備を進めてください。


