【任意整理】任意整理の闇‥ 弁護士ぶっちゃけ対談
債務整理の選択肢を誤らないために—弁護士がぶっちゃける「任意整理の闇」
債務整理に関する広告を、電車内などで目にされる機会は多いでしょう。その中でも「任意整理」という言葉は、あたかも債務整理の代名詞のように扱われがちです。しかし、果たして本当に任意整理は、借金に苦しむ方にとって最善の解決策なのでしょうか。本稿では、法律の専門家である弁護士の視点から、任意整理の実態と、債務整理の手続き選択における重要な論点について解説します。
法律事務所と法務事務所、そして専門家の権限の違い
まず、法律問題を扱う専門家として、私たち弁護士が所属する「法律事務所」と、司法書士などが所属する「法務事務所」の違いを明確にしておく必要があります。法律事務所と名乗れるのは弁護士がいる事務所のみです。弁護士は、破産、個人再生、任意整理など、裁判所を通じた手続きか否かにかかわらず、全ての法律事務を代理人として全般的に扱うことができます。権限に制限はありません。
一方、司法書士は、債務整理に関して代理できる範囲が限定されています。具体的には、個別の債権者ごとの債務額が140万円以下の場合に限り、和解交渉などの手続きを代理することが可能です。また、破産や個人再生の手続きで書類作成を支援することはできますが、弁護士とは異なり、裁判所との関係で代理人として出廷することはできません。
さらに重要な点として、司法書士は、高度な法律的判断が含まれる申立書の作成やその相談を扱えないとされています。債務整理、特に個別の事情を考慮し解決方法を判断していく過程は、高度な法律的判断を要することが多く、専門家として全体的なサポートができるのは弁護士であると言えます。
任意整理の現実と負担の大きさ
任意整理は、裁判所を介さずに債権者と個別に交渉し、主に負債の分割払いを再設定する手続きです。広告のイメージから「元本がカットされる」と期待される方もいらっしゃいますが、実際には元本のカットはほとんど期待できません。
任意整理でカットできるのは、通常、「将来発生する利息」のみです。和解が成立した時点までに発生した利息については、原則として元本と一緒に支払うことになります。返済期間は3年(36回払い)から5年(60回払い)程度が一般的です。
既に返済が困難な状況にある方にとって、元本全額と発生済み利息、さらに専門家(弁護士・司法書士)への高額な手数料(分割払いとなることが多い)を上乗せして、3~5年で完済するのは極めて負担が大きいと言わざるを得ません。この負担を考慮すると、「そもそもその方が任意整理に適しているのか」という判断は慎重に行う必要があります。
信用情報(ブラックリスト)の観点から見た破産との比較
債務整理手続きを行うと、任意整理であっても自己破産であっても、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)として登録されます。この点に違いはありません。
しかし、ブラックリストからの情報が消えるタイミングには大きな違いがあります。自己破産の場合、通常、免責決定が出てから5〜7年程度で記録が抹消されます。一方、任意整理の場合、記録が抹消されるのは「完済した後」から起算して5〜7年後となります。
例えば、3年間の分割払いで任意整理を完済した場合、記録が消えるのは完済からさらに5~7年後、つまり手続き開始から合計8~10年程度後になる可能性があります。この点を比較すると、経済的なリスタート(再出発)を早く切るという観点からは、破産の方がメリットが大きい事例が多く存在します。
また、自己破産を選択すれば、返済に回していた月々の資金(例えば毎月5万円)を生活費に充てることができ、3年後には約180万円を手元に残せる計算になります。生活再建資金という意味でも、破産制度は大きなメリットを提供します。
「なぜ任意整理ばかり勧められるのか」—専門家側の事情
本来、生活が立ち行かない状況の方には破産制度が再出発の機会として設計されています。それにもかかわらず、なぜ一部の事務所では任意整理ばかりが推奨されるのでしょうか。
一つの大きな問題は、専門家による「破産手続きのメリット説明不足」です。破産の説明をせずに任意整理を進めた結果、依頼者が返済に行き詰まり、結局1~2年後に改めて破産を相談に来るケースも少なくありません。
さらに専門家側の事情として、手続きの手間や費用面の問題があります。
- 事務処理とノウハウ: 破産手続きは裁判所への申立てが必要であり、資料の準備や申立書の作成など、事務的な負担が大きくなります。ノウハウが乏しい、あるいは手間を省きたい事務所が、比較的簡便な任意整理に流れる傾向があると考えられます。
- 予納金の違い: 自己破産手続きにおいて、裁判所に納める予納金(主に管財人費用)の最低額は、弁護士が代理人として申し立てる場合と、司法書士が書類作成を支援し本人名義で申し立てる場合とで大きく異なります。例えば、大阪地方裁判所では、弁護士代理の場合最低21万円程度ですが、本人申立ての場合は最低50万円以上と定められています。この大きな差は、弁護士が事前に資料を整備し、裁判所の負担を軽減する役割を果たすことによるものです。この費用面の差が、手続きの推奨に影響している可能性は否定できません。
債務整理の相談において最も重要なこと
債務整理は、あなたの今後の生活のリスタートに関わる、非常に重要な判断です。専門家への相談時において、任意整理と自己破産の双方のメリット、デメリット、そして両者の比較について、十分な説明を受け、ご自身が納得した上で手続きを選択することが何よりも重要です。
もし、相談に行ったにもかかわらず、弁護士や司法書士本人と一度も面談できない、事務員しか対応しない、破産手続きについて十分な説明を受けられないといった状況であれば、その事務所への依頼は一旦立ち止まって慎重に再検討されることを強くお勧めします。あなたの将来の生活のためにも、信頼できる専門家に相談し、最善の道を選択してください。


