【債務整理】家は手放したくない!個人再生で借金圧縮?!

借金があってもマイホームを守りたい!個人再生による解決法と注意点を弁護士が解説

皆様、こんにちは。弁護士の庄司諭史です。

「借金の返済が苦しいけれど、家族と暮らすマイホームだけは絶対に手放したくない」 このような切実なご相談をいただくことが多くあります。

結論から申し上げますと、借金がある状態でも、家を守りながら生活を立て直す方法は存在します。その最も有効な手段が、「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」を利用した「個人再生」という手続きです。

しかし、この手続きには「タイムリミット」があり、対応が遅れると自宅を救うことができなくなってしまいます。今回は、具体的な事例を用いたシミュレーションと、絶対に知っておくべき手続きの期限について解説します。

1.住宅ローン特則付き個人再生とは?

通常、借金の返済が滞り、そのまま放置してしまうと、債権者による強制執行(競売)が行われ、最終的にご自宅は売却されて人手に渡ってしまいます。

これを防ぐための強力な手段が「個人再生」です。 個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、借金の総額を大幅に圧縮(減額)し、その圧縮された金額を原則3年(最長5年)で分割返済していく手続きです。

この手続きの中で「住宅ローン特則」を利用すると、「住宅ローンはそのまま支払い続ける(=家は残る)」一方で、「それ以外の借金(カードローンなど)だけを大幅に減額する」ことが可能になります。つまり、家を守りながら、その他の借金負担を軽くすることができるのです。

2.【事例】個人再生で生活はどう変わるのか?

では、実際にどのくらい負担が減るのか、具体的なご家庭のモデルケースでシミュレーションしてみましょう。

【ご相談者の状況】

  • 夫(40歳): 月収(額面)35万円
  • 妻(38歳): 月収(額面)15万円
  • お子様: 小学生1人
  • 世帯の手取り月収: 約38万円

【借金と支出の状況】

  • 住宅ローン: 残債4300万円(月々15万円返済)
  • その他の借金(夫): 消費者金融150万円、カードローン80万円、奨学金200万円
    • 借金総額:430万円(月々約10万円返済)

このご家庭では、住宅ローン(15万円)とその他の借金返済(10万円)で、毎月の固定支出が合計25万円に達しています。 手取り38万円から返済25万円を引くと、残りは13万円。ここから食費、光熱費、教育費などを捻出するのは非常に困難であり、生活が破綻している状態と言えます。親御さんの入院費用などが重なれば、一気に滞納が始まってしまうでしょう。

個人再生を行った場合のシミュレーション

このケースで「個人再生」を行うと、以下のようになります。

  1. 住宅ローン: 減額されず、これまで通り月15万円を支払います(自宅を維持するため)。
  2. その他の借金(430万円): 法律の基準に基づき圧縮されます。このケースでは、総額が100万円程度まで減額される可能性があります。
  3. 圧縮後の返済: 100万円を3年間(36回)で分割払いするため、月々約2万7000円となります。

【結果】 手続き前は月々25万円だった支払いが、合計17万7000円(住宅ローン15万+圧縮分2.7万)になります。 これにより、毎月約7万3000円もの余裕が生まれ、手元に残るお金も20万円を超えるため、無理なく生活を再建できる計算になります。

3.絶対に守るべき「タイムリミット」:代位弁済

「家を守れるなら安心だ」と思われたかもしれませんが、ここからが非常に重要なお話です。この「住宅ローン特則」を使うためには、時間的な制約があります。

住宅ローンを契約する際、多くの方は銀行の指定する「保証会社」と契約しています。もし、あなたが住宅ローンの支払いを滞納してしまうとどうなるでしょうか。

一般的に、滞納が5〜6ヶ月程度続くと、銀行は保証会社に対して「代位弁済(だいいべんさい)」を求めます。 代位弁済とは、あなたの代わりに保証会社が銀行へ住宅ローンの残額を「一括で」返済することです。これが行われると、債権者が銀行から保証会社に移り、保証会社からあなたに対して、一括返済を求められることになります。

重要なのは、「代位弁済がなされてから一定期間(6ヶ月)が経過してしまうと、もはや住宅ローン特則を使った個人再生はできない」という点です。

一度この期限を過ぎてしまうと、どれだけ家を残したいと願っても、法的にその道は閉ざされてしまいます。せっかく生活を立て直す手段があるのに、相談が遅れたばかりに家を手放さざるを得なくなるというのは、最も避けたい事態です。

4.個人再生が難しい場合の選択肢:任意売却

もし、収入の状況などにより個人再生が難しい場合や、すでにタイムリミットを過ぎてしまっている場合は、「自己破産」を検討せざるを得ないこともあります。

その場合でも、ただ競売(強制的な売却)になるのを待つのではなく、「任意売却」という方法を検討すべきです。 任意売却であれば、市場価格に近い高値で売却できる可能性があり、借金の残額をより多く減らすことができます。また、引越し費用の捻出や退去日の調整など、生活の再建に向けた柔軟な対応もとりやすくなります。

5.まとめ:借金問題は「早期相談」がカギ

借金問題、特に住宅ローンが絡む問題において最も恐ろしいのは、「まだなんとかなる」と考えて時間を浪費してしまうことです。

「住宅ローンの滞納はしていないが、カードローンの返済がきつい」 「親の介護などで出費が増え、来月の支払いが不安だ」

このような予兆がある段階でご相談いただければ、個人再生を含め、家を守るための選択肢を十分に検討し、準備することができます。 逆に、滞納が続き、裁判所からの通知が届くような段階になってからでは、取れる手段が限られてしまいます。

ご自宅とご家族の生活を守るために、返済に少しでも不安を感じたら、ためらわずに弁護士にご相談ください。早めの行動が、あなたの未来を守ります。