【自己破産】偏頗弁済の落とし穴!身内だけに先に借金を返しても大丈夫?

債務整理の落とし穴!偏頗弁済(へんぱべんさい)とは?身内や特定の債権者にだけ借金を返済してはいけない理由と対処法

こんにちは。弁護士の庄司諭史です。 いつも「かかりつけ弁護士チャンネル」をご覧いただきありがとうございます。

本日は、債務整理、特に自己破産手続きを検討されている方が陥りやすい、非常に重要な落とし穴である「偏頗弁済(へんぱべんさい)」について、詳しく解説させていただきます。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、もし心当たりがある場合は、今後の手続きに大きな影響を及ぼす可能性がありますので、ぜひ最後までご覧ください。

1. 偏頗弁済とは「偏った支払い」のこと

「偏頗弁済」とは、その漢字が示す通り、「偏った支払い」のことを言います。

具体的に言いますと、借金が多数あり、様々なところに返済しなければならない状況で、その中から特定の個人や会社にだけ、優先的にお金を支払う行為を指します。

偏頗弁済の典型的な具体例

債務整理を考えている方が「偏頗弁済」をしてしまうケースとして、最も多いのが「身内」への返済です。

  • 消費者金融A、B、C社から借入れがあり、その他に家族や友人からも借入れをしている。
  • 「家族に迷惑をかけたくない」「友達は裏切れない」といった思いから、こっそり家族や友人にだけ先に返済してしまう。

たとえば、「来月弁護士に自己破産の相談をする予定だったが、その前に実家から借りていた50万円を、お母さんに返済してきた」というケースは、まさにアウトです。

また、特定の債権者への対応も偏頗弁済に該当します。

  • 消費者金融A社、B社、C社がある中で、C社からの取り立てが特に厳しく、毎日バンバン電話がかかってくる。
  • 「怖いから」という理由で、C社にだけ先に返済してしまった。

こうした行為は、偏頗弁済として「やってはいけない行為」となります。

2. なぜ偏頗弁済はダメなのか?「債権者平等」の原則

なぜ偏頗弁済が問題となるかというと、破産手続きにおいて最も重要な原則である「債権者平等」の原則に反するからです。

「債権者」とはお金を貸してくれている人のことです。破産手続きでは、すべてのお金を貸してくれた人(債権者)に対し、平等に扱わなければならないという大原則があります。

特定の偏った人だけにこっそり返済してしまう偏頗弁済は、この債権者平等の原則に反する行為とみなされ、債務整理を進める上で大きな障害となります。

3. 偏頗弁済をしてしまった場合の重大なリスク

偏頗弁済をしてしまった場合、債務者本人にとって非常に大変な状況が引き起こされる可能性があります。

リスク1:免責不許可事由となる

偏頗弁済は、破産手続きにおける「免責不許可事由」となるリスクがあります。

免責不許可とは、破産手続きをしても借金の支払い義務が消えない(許してもらえない)ことを意味します。せっかく破産を申し立てても、免責が認められなければ、借金がそのまま残ってしまいかねません。

リスク2:否認権の対象となる

また、偏頗弁済は「否認権」の対象となる可能性があります。

否認権の対象となるということは、その返済行為自体が否定されてしまうということです。

例えば、こっそりお母さんに50万円を返済したとしても、その返済行為が否認されてしまうと、どうなるでしょうか?

  1. 破産手続きを進める管財人(破産手続きを見ていく人)などが、お母さんに対して「返済された50万円を事務所に返してください」と請求する。
  2. もし返金が困難な場合、その財産を減少させた責任として、債務者本人(あなた)が50万円を負担しなければならなくなる。

結果的に、親族や友人に迷惑をかけることになり、手続き自体も複雑化し、非常に大変な状況に陥ります。

4. もし偏頗弁済をしてしまったら?すぐに弁護士に相談を

この動画や記事をご覧になっている時点で、すでに「これに該当する行為をしてしまったかもしれない」と心当たりのある方もいらっしゃるかと思います。

そのような場合でも、絶望する必要はありません。まずは、すぐに弁護士に相談してください

偏頗弁済をしてしまったという事実があったとしても、その後の弁護士の方針に従って行動することで、「リカバリー」は可能です。リカバリーの方法は、裁判所や破産管財人とのやり取りを通じて進められます。

このリカバリー対応は、慣れた弁護士に任せていただくのが最も安全かつ確実です。

包み隠さず正直に話すことが解決への第一歩

弁護士に相談する際は、どんなに「これはまずいかもしれない」「バレたらどうしよう」と思うような行為であっても、全て包み隠さずに正直に話していただくことが非常に重要です。

全てを伝えていただくことで、新たな解決策や、どう対処すべきかというアドバイスが可能になります。隠そうとせず、正直な経緯を伝えてください。

5. 偏頗弁済に関するよくある質問(Q&A)

A:該当しません

破産手続きを進めていく上でも、日々の生活は継続します。生活を営んでいく上で必ず生じる家賃や食費といった日常に必要な支払いについては、偏頗弁済に該当せず、必要な行為として認められています。この点はご安心ください。

ただし、日常の生活費を超えるような、大きな出費や気になる出費については、念のため逐一弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

A:形式的には偏頗弁済に該当することはあり得ますが、処理可能です

クレジットカードの引き落としは、弁護士に依頼した後に意図せず行われてしまうケースがあります。

弁護士側で、事前に引き落とされないように対策を練ることもありますが、万が一引き落とされた場合でも、その会社に対して返金を求める対応を行います。また、返金が得られない場合でも、裁判所に「意図的に支払ったものではない」という説明を加えることで、破産手続きを進めることが可能です。

このケースは破産手続きにおいて大きな不利益になるわけではありませんので、処理は必ずできると考えておいてください。

A:通帳の調査でほぼ発覚します

破産手続きを行うにあたっては、債務者の皆様の通帳(銀行口座)をすべて調査します。通帳の出金・入金履歴をチェックしていく中で、使途不明な出金や、怪しげな出金がないかを細かく確認していきます。

弁護士が申立ての準備段階で本人に確認することもありますが、もし申立て後であっても、裁判所が必ず通帳をチェックします。裁判所からの指摘で発覚する可能性は非常に高いです。

いずれの段階にせよ、発覚してしまう可能性が高いため、申し立ての前に、すべて正直に弁護士に説明していただき、きちんと経緯を納得いくような状態にして裁判所に提出することをお勧めします。

まとめ

偏頗弁済は、「債権者平等」の原則に反し、免責不許可や家族への影響など、深刻なリスクを伴います。

もし心当たりのある方、またこれから債務整理をお考えの方は、まずは一人で悩まず、すぐに弁護士にご相談ください。正直にお話いただくことが、解決への最も早い道です。

弁護士が、皆様の状況に応じた最善の対処法をアドバイスさせていただきます。