相続人以外の人へ財産を遺す方法 ~遺贈の活用~
遺言書を作成することで、法定相続人以外の人(内縁の配偶者、友人、お世話になった人など)にも、財産を遺すことが可能です。この方法は「遺贈」と呼ばれる制度を利用することで実現できます。
遺贈は、遺言によって相続人以外の人に財産を渡すことを指します。被相続人(財産を遺す人)は、法定相続分にとらわれず、自由に受取人や遺す財産を指定することができます。
遺贈で財産を遺せる対象
遺贈を通じて財産を遺せる相手は、相続権を持たない人も含まれます。以下のような人たちが主な対象です。
- 内縁の配偶者: 法律上の婚姻関係がないが、実質的に夫婦同様に生活を共にしていたパートナー。
- 友人・知人: 親しい友人や、長年お世話になった知人。
- お世話になった人: 生前に介護や看護をしてくれた方や、恩師など特別な恩を感じている人。
- ペットの世話をしてくれる人: 愛するペットの将来の世話を託せる人。
- 法人: 特定のNPO法人や慈善団体など、社会的貢献をしたい法人や団体。
遺贈の種類
遺贈には、いくつかの種類があります。それぞれの違いを理解して、最適な方法を選択することが大切です。
- 特定遺贈: 特定の財産を指定して遺贈すること。たとえば、「自宅をAさんに遺贈する」といった形で、特定の財産を特定の人に遺す方法です。
- 包括遺贈: 財産全体に対する割合を指定して遺贈すること。例として、「財産の3分の1をBさんに遺贈する」といった形で、財産全体から特定の割合を遺す方法です。
- 残余遺贈: 特定遺贈や包括遺贈で指定されていない財産の残りを遺贈すること。「Cさんに残りの全財産を遺贈する」といった形で、指定されていない残りの財産を遺す方法です。
遺贈の注意点
遺贈を活用する際には、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。これらを理解しておかないと、相続トラブルに発展する可能性があります。
- 遺留分に対する配慮: 遺贈によって法定相続人の「遺留分」を侵害することはできません。遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる権利として法律で保障された財産の割合のことです。もし遺贈が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分減殺請求がなされる可能性があります。
- 相続税の負担: 遺贈を受けた人は、相続税を支払う義務があります。特に、相続人以外の人が遺贈を受けた場合、相続税の税率が相続人よりも高くなることが多いです。このため、遺贈を行う際には相続税の影響を考慮する必要があります。
- 受遺者の意思: 遺贈を受ける人(受遺者)は、遺贈を受け取る義務があるわけではなく、遺贈を放棄することもできます。そのため、遺贈する財産や受遺者の意向を事前に確認しておくことが重要です。
まとめ
遺贈は、法定相続では実現できない被相続人の意思を反映し、特定の人や団体に財産を遺すための有効な手段です。しかし、遺留分や相続税の問題を考慮する必要があり、適切な手続きを踏まなければ、遺贈がトラブルを引き起こす可能性もあります。