【マンション】買うか?借りるか?分譲/賃貸「リスク」の視点で比較検討〜弁護士解説

弁護士の浜田将裕です。本日は、分譲マンションを購入して住むべきか、あるいは賃貸マンションを借りて住むべきか、というテーマについて、起こり得るリスクとその中身を法律的な観点から比較検討します。

賃貸と区分所有建物の基本的な法律関係

まず、両者の法的な関係性から整理します。

賃貸マンションでは、建物全体を所有する貸主(オーナー)と、個々の部屋の借主(入居者)がそれぞれ個別に賃貸借契約を締結します。入居者同士には横の契約関係はありません。適用されるルールは、賃貸借契約の内容と、借主を保護する趣旨を持つ借地借家法などの法律です。借主は貸主より弱い立場にあるという前提で法律が作られており、借主が契約内容を変更したいと思っても、原則としてそれはできません。

一方、区分所有建物(分譲マンション)では、部屋を購入した方々が「区分所有者」となります。区分所有者は全員で「管理組合」を構成し、強制加入となります。管理組合は、意思決定や業務の執行のために、理事会(理事長、役員)を設けます。区分所有者間には管理組合の一員としての横の繋がりが発生します。適用されるルールは、管理組合が定める「管理規約」や「使用細則」です。これらのルールは、管理組合の総会で議論し、多数決で変更することが可能です。もし区分所有者がルールがおかしいと感じれば、管理組合で議論して変えることができます。

リスクの視点による比較検討

この法的な基盤の違いが、様々なリスク発生時の対応に影響を及ぼします。

リスク1:建物自体の滅失・所有権喪失のリスク

建物が災害などで壊れたり、なくなったりした場合のリスクです。

賃貸の場合、建物の所有権は貸主にあるため、建物が滅失しても、借主は住めなくなるだけで、所有権を失うことはありません。このリスクは貸主が負っています。

しかし、区分所有建物の場合、区分所有者は個々の専有部分の所有権を自ら持っているため、建物自体がなくなってしまえば、自分の所有権を失うというリスクを直接負うことになります。

リスク2:不動産の維持管理・修繕のリスク

建物の維持管理や修繕が必要になった場合、費用の負担者が異なります。

賃貸の場合、貸主には借主に建物を住居として使用できる状態(修繕が必要な状態ではないこと)にする義務があります。経年劣化や故障などで修繕が必要になった場合、貸主が自己負担で修繕する義務を負います。

区分所有の場合、専有部分の修繕(経年劣化を含む)は、原則として区分所有者自身が負担します。建物全体に関わる共用部分の修繕費用は、管理組合の予算(修繕積立金など)から支出されます。

リスク3:所税公課・金利上昇のリスク

固定資産税などの税金や、住宅ローンの金利が変動するリスクです。

賃貸では、固定資産税などの負担は所有者である貸主が直接受けます。税金が上昇しても、家賃は契約で決まっているため、直ちに借主に転嫁されることは基本的にありません。家賃を上げようとする場合は、貸主からの賃料増額請求や裁判といったプロセスが必要です。また、貸主が組んだローンの金利上昇リスクも、借主には直接関係ありません。

一方、区分所有者は所有者本人ですから、税金が上がれば毎年の支払いが直接増えます。住宅ローンを組んでいる場合、金利が変動すればその影響を直接受けます。

リスク4:家計悪化による滞納・債務のリスク

収入減などで家計が悪化し、支払いが困難になった場合のリスクです。

賃貸では、家賃を滞納すると(実務上は一般的に3ヶ月程度)信頼関係が破壊されたとして、契約違反(債務不履行)により契約解除・退去を求められるリスクがあります。最悪退去し、未払い分を支払えば、その物件に関する問題は一旦終わりとなります。その後は、自身の収入や家計状況に見合った別の場所へ転居し、生活を立て直すことが可能です。

区分所有の場合、管理費や修繕積立金(規約で金額が定められている)の滞納は管理組合からの督促対象となり、最終的には裁判や差し押さえ、競売により所有権を失う可能性があります。住宅ローンを組んでいる場合は、銀行の抵当権に基づき、滞納により差し押さえを受け競売にかけられ、所有権を失うリスクもあります。

特に、売却してもローン残高が残ってしまう「オーバーローン」状態の場合、物件を手放した後も残った負債を返済し続ける必要があり、さらに別の賃貸に移れば家賃とローンの二重払いを強いられます。このような状況下では、物件を手放してもなお負債に苦しむことになり、個人再生や自己破産といった手続きを取らざるを得なくなることも考えられます。管理費や住宅ローンなどの支払いは「逃げられない」ため、区分所有はフレキシブルに状況を変えることが難しいのです。

リスク5:住環境悪化時のリスク(迷惑住人対策)

マンション内で迷惑な住人(騒音、迷惑行為など)がいた場合のリスクです。

賃貸では、借主は迷惑住人との間に直接的な契約関係がないため、退去を直接要求できません。貸主に対し、居住可能な状態を提供する契約上の義務に基づき、住環境の改善を要求します。貸主が動いてくれない場合や、改善されない場合は、やむを得ず自身が退去し、別の場所に住むという対応が比較的容易に取れます。

区分所有の場合、管理組合が規約や使用細則に基づき、迷惑行為の是正を求め、警告書を送付します。応じない場合は、管理組合の決議を経て、迷惑行為差し止めを求める裁判を起こすことも可能です。さらに、最終手段として、管理組合が申し立てる区分所有権の競売請求(平穏な居住環境を回復するため所有権を失わせる手続き)も存在します。区分所有者は主体的に管理組合の活動に参加し、問題解決に乗り出すことができます。また、ルール違反者に違約金を定めておくことも可能です。

ただし、購入者である区分所有者が迷惑住人を理由に退去しようとしても、管理費、修繕積立金、住宅ローンの支払いは残り続けます。物件を賃貸に出す場合、迷惑住人の存在は新たな借り手への説明義務が発生する可能性があり、借り手がつかなかったり、家賃が適正に設定できなかったりする事態も考えられます。オーバーローン状態であれば売却も困難となり、「我慢して暮らすしかない」状況に陥るリスクもあります。

結論:リスク負担の重さを考慮する

世間では「家賃は捨て金だが、ローンは貯蓄代わりになり、最終的に資産(不動産)が残る」と言われることがあります。確かに、住宅ローンを無事完済し、オーバーローン状態を避けられれば、それは正しい見方かもしれません。

しかし、分譲マンションの購入は「所有者」として、建物の維持、税金、金利、家計悪化、住環境問題といったあらゆるリスクを自分で被らなければならない、という側面を深く考慮すべきです。

賃貸は資産にはなりませんが、何か問題が起きた際に、すぐに状況に適した場所に転居し、リスクを回避できるというフレキシブルさが大きな魅力です。物件の購入を検討される際は、こうしたリスク負担の重さを十分にご理解いただいた上で、慎重にご判断いただく必要があるでしょう。